あと二年で…。
普段、私が帰宅する頃はいつもPCの前に座っている。
私がビールを空け食事を済ませた頃、
やっと机に向かって何やらテキストを開く音が聞こえる。
なんでこんな時間から…、と小言を言いたい気持ちをグッと抑え堪える私。
そのシルエットに、
もうセピア色でしか思い出せない古き自分を重ねて、ニタリとしてしまう…。
もちろん、特に用がなければ交わす言葉は無い。
でも私は勝手に一人で頷いている…。
続きます…。
以前は、リビングで寝転びながら教科書とノートを広げていた。
そばに酔っ払いがいようと、TVを観ながら笑い転げる弟がいようと、
一応最低限の宿題はこなしていたようだった。
ふと気が付くと、その君が最近は机に向かうようになっていた。
一年前のテキストがホコリを被ったままだった机が、
いつの間にかノートを広げられるようになっていた。
まあ、気を抜くとすぐに足の踏み場もない部屋に戻ってしまうのは相変わらずだけど…。
特に激しい反抗期だったわけではない。
でも私がなにか尋ねても帰ってくる言葉は、
五文字程度の聞き飽きたフレーズが順番に繰り返されるだけなのは変わらない。
同じフレーズでも注意して聞いてみると、
語り口が穏やかに、そして落ち着いてきたことに気付いたのは最近の事だ。
その君が、珍しく主張らしき事を訴えたのは、ちょっと前のことだった。
身に付けるモノにはまるで無頓着な君が言った。
「100メートルのタイムを0.4秒縮めたい。そのために買って欲しいスパイクがある」
計算上は五千円でも0.1秒しか縮まらない短距離専用スパイクだったが、
もしも目標が達成できたとき、そのスパイクの効果だけだったと勘違いはしてほしくない。
そこには必ず君の努力があったことに気づくのなら、
少しは高い金を払った意味があると思っている。
悲しいかな、受け継いだ遺伝子のせいで典型的な文系頭脳の君。
その君の希望進路が理系だと聞いた時は冗談だとおもった。
遺伝子はしょうがない、諦めろ。
でも全てを諦める事はない。
自分自身の力と意志という最大の可能性が残っているんだから。
だから…、私は助言だけしかしない。
私自身の経験や見聞は、君の未来や可能性を決められない。
自分で決めろ。自分でやれ。
枕木を自分で並べ、自分でレールを敷け。
曲がってようが真っ直ぐだろうがどっちだって構わない。
気に入らなかったら自分で直せ。
もうそんな年齢になったのだから。
「あれから、15年…。」というタイトルを付けた記事から、
もう一年が過ぎた。
気がつけば、私が両親の元を離れて暮らし始めた年齢まで、
あと二年しか残っていない…。
もう昨日になってしまったが、誕生日おめでとう。
君を授かったことに、母親とともに感謝している。
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